ケーキをたくさん食べたから体が天まで届いてしまう 何をしたらよいやら銀の針と銀の糸で星をつないでみる
かわいい星座をつくるたびそれぞれに物語が宿るのがおもしろい(りぼんの神さま、ティーカップの神さま)
その日はあらゆる神話の第一夜みたいに世界まるごと夢を見ていた 夜が明けると世界がちょっとおかしくなっている
☆ある日 机の引き出しから身に覚えのないノートが見つかりました。
持ち主の名前はありませんでした。
ページをめくってみると ところどころ自分の記憶と重なるような・・・
床にホームページのリンクが貼ってあり踏むとどこかに飛ぶことができる部屋
近くのリンクを踏んでみるとずっと探していたCD『ロング・ロング・ドリーム ゆめのオルゴール館』の情報が見つかる
CDケースは青いすりガラスのような半透明、画像を見てそのものだと確信したが、その下の説明に「実在しないCD」と書かれていた
薄明かりの幸福のなかにいた 終わらなかった夢のいちばん浅いところ それは祈り、それは閉鎖的な親密 あるいは子どもの頃のおぼろげな記憶
たまご麺のスープという本を図書館に返しに行くと建物が雪に覆われていて大きな雪見だいふくみたいになっていてかわいかった
その日はそれを見て満足してしまったので家に帰ってから本を返し忘れたことに気づいた
特急電車の窓が端から端へ景色をどんどん取り替えていく
もしもこんな勢いで記憶を置き去りにできたら まばたきするたび新しい自分になれたら それもそれで寂しいよと風が言う
あかるい午後だった 学校の避難訓練でクラスごとに一列になって固まったときの廊下の空気は冷たい
「おかしも」の「し」で みんなひとりでいるみたいにただそこにいた 何かに守られている気がした
お風呂上りに冷房の効いた部屋にいると周りの空気はひんやりしていて自分の体を縁取るように温かく、命はこんなふうにしてあるのかと思った
朝になって目覚めて昨晩貼った温湿布をはがしたら寂しい
振り向きもしないまま砂になった時間や名を知らぬ花の隙間を吹き抜けていく海風
中にドレンチェリーが入ったケーキをナイフで切ると断面が夕暮れみたいに見えた クリームの層はぼやけた地平線でドレンチェリーはもうすぐ沈む夕日
朝焼けと言ってもよかったのかもしれないけど、やっぱりそれは夕暮れというほかないのだった
ポケットに入っていた古い切符を改札に通したら知らない駅のホームに出た 電車は来ず発車メロディだけが何度も繰り返し流れていた
多分ここでは帰る場所を思い出した人から順番にいなくなるんだろうと思った
パンをこねてひと休みしていたらパンがひとりでに星のかたちに膨らんで、流れ星みたいな尾を引いて宇宙へ飛んでいった
その日は月が見えない代わりに、青と黒がマーブル状になった大きな惑星を肉眼で見られる日だった
いくつか強い光が瞬いているのが見えて、そこがきっと大都市なのだろうとなんとなく思った